une pivoine

東海地方でひとりぐらし 25歳のブログ

宙組 『エリザベート ―愛と死の輪舞―』に行ってきた

記事を全然書いていませんでした。

5月に博多座王家、6月に中日劇場でローマの休日に行っていたんですが、感想はかけずじまいに。でもどちらも心に残る公演だったな……(余韻)

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きのう7日(日)阪急交通社貸切の宙組公演に行ってきました! 2年前の花組公演は、チケット難で1度だけしか見られませんでしたが、たった2年しか間があいていないとなると、演じる方も役作りが大変なんだろうな。

 

エリザベートは色んな人にとって特別ですよね。

どうしてこんなにも、黄泉の帝王=死とのラブストーリーに惹かれるんだろう。

 

観客の多くが歌もストーリーも頭に全部入っているであろうし、見比べてきた人にとってみれば比較対象がこんなにもある演目…。演じる側のプレッシャーを想像するだけでも、並大抵のものではないのでしょう。

 

予習ということで、世界史の教科書と、小池修一郎先生が書かれた小説版の「エリザベート」、それにこの間発売された「ミュージカル・エリザベートはこうして生まれた」を読みました。これは読んでよかった。理解が深まりました。

やっぱり柱になるのが、「トートは両性具有のような、中性的な存在」だということ。トートは人間ではないもんね。男も女も惹かれる存在でなければならない。そういう意味では、宝塚歌劇でやることにすごい意味があると思った。

 

全体的な感想は、丁寧だった。すごい真剣に、作り手が何を考えて、1つ1つの場面にどういう意味をこめて舞台をつくってきたのかに忠実に沿っている印象。

 

色々読んだ結果、トートのシシィに対する気持ちは、衝撃→興味→執着→愛への変化だと思った。

木から落ちて死んだシシィ。トートが命を奪う口づけをしようとして彼女の手首をつかみ目と目があう。手首越しから、眼差しから「生きたい!自由に羽ばたきたい!」というシシィの強い気持ちが伝わってくる。その生きることへの熱さにびっくりして思わず突き放した、トートの衝撃。そしてこの娘が生きたらどうなるんだろう、どうやったら自分のものになるんだろうっていう、生きる者に対しての興味。目覚めたシシィが「確かにそこにいるの あなた」と言ったときの、切なげなトート…!!冒頭でこのへんがよく伝わってきた。

 

最後通牒のシーンでも、みりおんシシィ、すでに十分死に惹かれていて、すんでの所で理性で打ち勝った感じが伝わってくる

 

第1幕の終わりの鏡の間のシーン。圧倒的な美貌で外交に貢献し、ゾフィーとの勝負に勝って誇りに満ちたシシィ。トートも絶対その美しさに衝撃を受けて、「お前…美しすぎるだろ!俺を求めろ!俺を選べ!」って思っているはずなのに「陛下とともに歩んでまいります」と言われちゃあ…執着と愛のボルテージも最高潮になりますよね。

1幕のクライマックス「お前しか見えない! 愛してるー! エーリーザーベーーーーート!!」って言いたくなりますよね。

1つ1つに説得力があるというか、トートの気持ちも、シシィもトートに惹かれていく過程もよくわかって「結局おふたりさん、否定しても息子殺してもラブラブやないですか!」みたいな感じでした。

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黄泉の帝王・トートにとって、待っていればいずれシシィも誰もかも死ぬんだから、最後には自分のところに来ることはわかっているんですよね。じゃあトートが「『生きた』シシィに愛されたい」というこというのはどういうことなんだろう…と疑問でして。だから最後の証言で、「時を待っている」と答えたトートに、夫フランツに「嘘だ、あなたは恐れてる、彼女に愛を拒絶されるのを!」と指摘する。

トート閣下は「ちがーーーーう!!!!」って爆発して、「誰も知らないその愛エリザベート」ワ~ア~ア~~というコーラス。証言の場にいる誰も、シシィが誰を真に愛していたかわからないということでしょう。

 

トートは静寂の中ナイフをルキーニに渡す。そのナイフで刺殺するわけじゃないですか。命を奪うよう命令を下すことは、最後の求愛ということなのか? 「自分を受け入れるだろう」と証明するため? シシィもシシィで、ルキーニの攻撃を傘で1度よけて、「エリザベート…」ってトートに名前を呼ばれたあと、胸を無防備に相手に向けて刺し殺されるんですよね。みりおんの表情はわからなかったけど、ここでトートの求愛を受け入れた、ヤケになって逃げ場としての死ではなく、選んだってこと…なんだろう。うーん。と観劇中も帰路につく中も夢の中でも(笑)考えてました。

 

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↑賛否両論あったかもしれないけどすごい美しいし、紫で尊い?というか慈愛に満ちているポスターだと思う

(つづく・・・)